農はじちゃん米づくりの1年間ってどんな作業をやってるの?



農家のリアルな苦労や危険なポイントも知っておきたい…


- 育苗から出荷まで米づくりの流れ
- 作業中のリアルや生死に関わる危険ポイント
- 30キロの米袋積みや夏の草取りなど、現場の実体
本記事はただの作業マニュアルではありません。
元農家だからこそ知っている泥臭い現実や裏事情まで、包み隠さずお伝えします。
この記事を読み終える頃には、「米はこうして作られているのか」と、農業全体への見方が変わり、これからの関わり方のヒントが見つかります。



それでは米づくりの最初のステップである「苗づくり」の工程から紹介していきます。
苗づくり|米作りの土台を仕込む工程
- 芽出しは温度・湿度の管理が命
- 種まき作業は自動化が進んでいるが、苗箱の運搬など身体的な負担も大きい
- ハウスでの育苗は、太陽光と水管理のバランスが重要
米作りは、田んぼに苗を植える前から始まっています。
ここでは、田植えの土台となる「苗づくり」の工程を、種籾の芽出しからハウスでの育苗まで順番に見ていきましょう。
種籾の芽出し|冬場の温度管理が発芽のカギ


まずは苗づくりから解説します。
米の苗を作るには、「種籾(たねもみ)」が必要です。種籾は、農協(JA)から入手するのが一般的ですが、民間企業から直接購入するケースもあります。
種籾を準備できたら、次に「浸種(しんしゅ)」という工程に入ります。
浸種とは、水を張った容器に種籾を浸けて水分を吸わせる作業のことで、発芽をそろえる役割があります。
浸種を終えた種籾は、遮光した環境のもと、催芽器などを使って一定の温度に保ち、発芽をうながします。



芽出しは外気温が低い時期に行われるので、温度管理が欠かせません。
苗床づくり|自動播種機で流れ作業に


種籾の芽が出てきたら、次は「苗床づくり」に入ります。
苗箱に肥料と培土を入れ、そこに種籾をまいていきます。今は自動播種機(はしゅき)を使って流れ作業で行うのが一般的です。



栽培の規模によっては、
苗を買う農家も珍しくないです。
ちなみに、種がまかれた苗箱は、1枚あたりがなにげに重い(およそ1〜2キロ)。それをパレットへ何百枚と積む作業は、腕と腰にハードな仕事です。
種まきを終えた苗箱は、日が当たらない遮光環境へ移動し、保温シートなどで囲って、芽が出揃うのを待ちます。
ハウスでの育苗|並べる作業はいまもアナログ
芽が出そろったら、ビニールハウスでの「育苗(いくびょう)」に移ります。
ハウスの地面にはあらかじめビニールシートを敷いておきます。これにより雑草の抑制から保水性、地温を確保します。


そして苗箱をハウスに並べるのですが、これがまたなかなかにアナログな手仕事なんです。



フォークリフトを使って苗をハウスの入り口まで運び込み、それから手で1枚ずつ地面に並べます。
苗箱並べが完了したら、日々の水やりや換気などの管理をして、苗の生長をサポートします。
田んぼの準備|苗づくりと並行する裏方作業
- 畦塗り(あぜぬり)はトラクターと手作業の連携が必須
- 水量は暗渠(あんきょ)と明渠(めいきょ)の整備がカギ
- 代かきは土をトロトロにして雑草を抑える重要な工程
苗づくりの裏では、田植えに向けた準備も進められています。米づくりの成否を左右する、重要な下準備の工程を解説します。
黒つけ(畦塗り)と角つけ|機械と手作業の連携


春先の田んぼづくりは、「黒つけ(畦塗り)」からスタートします。
黒つけは、田んぼの四辺のフチ(畦)を土で塗り固めることで、水持ちを高める作業です。
作業は畦塗り機を取り付けたトラクターで行います。時速1〜2kmほどのスピードで作業するため、集中力と眠気への耐性が求められます。



関東の平野部では2〜3月頃にやり始めます。
そして黒つけは、土が乾いているとうまくいきません。そのため、いい感じに雨をもらえるかが農家の関心事です。
また黒つけでは、田んぼの四隅(角)も整えます。
その際には先が尖った「剣先スコップ」を用いて、人の手で直角になるよう「角つけ」を行います。
黒つけと角つけは、田んぼづくりで手を抜けない作業の一つです。


暗渠(あんきょ)と明渠(めいきょ)の整備


黒つけと並行する作業が、暗渠(あんきょ)・明渠(めいきょ)といった、排水まわりの整備です。
一見何もないように見える田んぼの土中には、「暗渠」と呼ばれる排水パイプが埋まっています。そしてこの暗渠の排水口には、フタがあって、それを閉めていくという作業があります。
具体的には、田んぼのわきにある水路に入って、暗渠の排水口を見つけて、フタをしていきます。
それと同時に、地上部にある直接的な排水口、「明渠(めいきょ)」も整備します。
明渠は、トラクターで踏まれたり自然と沈んだりなどしやすい箇所です。掘り返して高さを調整したり、パイプが割れていたら交換したりなどの作業が行われています。



田んぼの水位は、暗渠と明渠のがしっかり機能してこそ調整できます。
暗渠のフタは、いつの間にか無くなってしまうことがあります。管理不足なのもあるのですが、誰かに持っていかれるケースもあったりとか。
フタが無かった場合の定番の応急処置も紹介します。丈夫なビニール袋(ジップロックなど)に土を詰め、排水口を塞ぐように押し込みます。スキマから水が漏れないよう、絶縁テープでしっかり補強すれば完了です。
入水|水源によって異なる地域事情


4月下旬頃には、いよいよ田んぼへの入水がはじまります。ただこの入水事情は、地域によって異なります。
地下水を専用のポンプで汲み上げる田んぼは、自身の都合で水の扱いに融通が効きやすいです。
一方、河川から用水路を通じて水を引き込む地域では、水を使える時間帯(例:8時〜17時)が厳密に決められていることがあります。
雨が少ないシーズンは水の確保に苦労するのはもちろんのこと、トラブルで時間通りに水が来ないこともあったりと、肝を冷やすシーンが多々あるのです。



近年は水の行き来を支える施設やパイプの老朽化も懸念されています。
代かき|土をトロトロにする最後の仕上げ
田んぼ一面に水が張れたら、次は代かき(しろかき)です。
「ハロー」という代かき専用の機械をトラクターに装着し、土の表層を耕しつつ、田んぼ全体を平らにならします。





雑草やその種をすき込むという、防草の役目も担っています。
代かきは、土の表層がトロトロになるのを目安に行われます。田んぼには2〜3度入るのが一般的です。
そんな代かきですが、ドロドロの田んぼの中は、どこを耕したか分からなくなりがちなんです。一方で、GPSの製品の登場により、どこまで代かきしたかを確認できる仕組みも登場しています。
田植え作業|現場のリアルな1日の流れ
- 水位は土の表面が出るか出ないかに調整
- 苗箱の運搬は指先から腰を襲う重労働
- 田植え機の出入りは作業時に最も気をつけるポイント
田植えは、誰もがイメージしやすいであろう米づくりの工程です。
ただ、現場では水位調整から田植え機の進入まで、思った以上に細かい注意点があります。実際の作業の流れに沿って見ていきましょう。
田んぼの水位調整|「浮き苗」を防ぐコツ


田植えは、代かきしてから2〜3日空けた、水の濁りが落ち着いたタイミングで行います。
田植えする田んぼが決まった際には、まず明渠から水を抜きます。田んぼの地表が水から「出るか出ないか」を目安に調整。
水が多くジャブジャブの状態だと、植えている苗やまっすぐ進めているかが確認しづらく、「浮き苗」の原因になります。
苗積みと農薬散布|腰と指先を消耗する地味な重労働


育苗した苗箱は、トラック(だいたい軽トラ)のラックに積みます。そしてこの苗箱、前回の種まきの時よりも苗は成長し、水もしっかり含んでいることから、一枚一枚がさらに重くなっているんです。
腰を曲げて地面から持ち上げてラックに積む作業は、一種の筋トレです。



掴むところが苗箱のフチしかないので、指先も地味に痛い。
省力化のツールとしては、滑り台のように苗を運べる「苗箱スライダー」といったものもあります。
箱処理剤「アドマイヤーCR」
苗を積む前には、殺虫・殺菌対策として「アドマイヤーCR箱粒剤」という農薬を散布します。


使い方はシンプルで、苗箱の上からパラパラとまくだけです。1箱あたり50グラムの散布が規定となっており、ウンカやいもち病などのリスクを大きく軽減できるため、やらない手はありません。



苗を積んだら植える田んぼへ向かい、畦道でスタンバイします。
田植え機の運搬と進入|入り口は最初の難関


田植え機を田んぼへ持っていく工程ですが、拠点から近ければ自走します。しかし、田植え機のタイヤはアスファルトを走るのが苦手で傷みやすいため、トラックの荷台に載せて運ぶのが一般的です。
田んぼに着いたら荷台から田植え機を下ろし、入り口からゆっくりと入ります。実はここが油断大敵。
特に入り口の勾配が急な場合は、ひっくり返るリスクがあります。



田んぼには焦らずゆっくり入るのが鉄則。
無事に入れたら、軽トラがスタンバイする畦道の際まで行き、苗を積み込んで田植えスタートです。
田植えの手順|効率的に植える4ステップ


田植えの方法は農家によって違い、どれが正解というのはありません。
ここでは筆者の経験に則った(縦長の田んぼ・8条植え田植え機)方法を紹介します。
- 入り口から、植えずに横移動してスタート地点へ
入り口から田んぼに入ったら植えずに、入り口と同じ辺の反対側の角まで横移動します。ここが田植えのスタート地点になります。
なぜ移動するかというと、最後に外周(枕地)を回って入り口から出るためのスペースを残しておく必要があるからです。 - 田植え機を縦方向に向け、奥の畦まで植える
スタート地点に着いたら、田植え機を縦の進行方向に向き直し、いよいよ植え始めます。ここでは、最初の一列は条数を減らします(8条植えなら2条程度)。
畦と田植え機がしっかり平行になっているかを確認しながら、奥の畦まで一直線に植えていきます。まっすぐキレイに植えるための大事な一列です。 - バックしてターン、隣の畝で全条数の往復スタート
奥の畦に到着したら、バックして方向転換し、隣の畝に入ります。
ここからは植える条数をマックス(8条)にして、奥から手前をひたすら往復しながら植えていきます。
これが田植えのメイン作業で、田んぼの大部分が埋まっていきます。 - 最後に外周(枕地)を植えながら入り口へ
往復を繰り返して入り口側に近づき、残りが外周分の幅だけになったらメインの往復は終了。
最後に外周(枕地)を植えながら、入り口へ向かって戻っていきます。入り口から田植え機が出られたら、田植えは完了です。
田植えと同時の施肥|一発施肥ペーストの手軽さと注意点


施肥の方法では、田植えと同時に肥料をまく「一発施肥ペースト」で行っていました。田植え機に備わっているタンクへ肥料を入れて、田植えしながら施肥できるという手軽さが魅力。
肥料を背負って田んぼ歩く手間がないため効率的ですが、田植え機の肥料の残量を常に気にしたり、レバーを押し忘れて施肥し忘れたりするなどの、うっかりトラブルがあります。



ちなみにこの一発施肥ペースト、一つ20キロと重いんです。
田植えで直面する3つの苦労と事故リスク
- 田植えの助手は、苗の補充から浮草やゴミの処理に追われる
- 田植え機の転覆・スタック(ハマる)は生死に関わる
- 急な雷雨にご用心
田植えの現場には、独特の大変さや危険が潜んでいます。
ここでは、実際に田植えをやってみないと分からない、現場のリアルな苦労と事故リスクをお伝えします。
助手は息つく暇なし!?浮草やゴミの処理


代かきをした田んぼでも、コンディションが悪いところは、雑草の浮草やタネ、ゴミ、水のアクが大量に浮いているケースがあります。
このとき大変なのが、苗を運ぶ「助手」です。
苗の補充に加えてゴミ処理に追われ、息をつく暇もない場合があります。



追いつかない場合は、助っ人を呼ぶか、田植えのオペレーターにも手を貸してもらうほかありません。
一歩間違えれば大惨事。出入りによる事故リスク


田植えで危険な事故が起こりやすいのが、「田んぼへの出入り」です。
入り口が極端に狭かったり勾配が急だったりすると、田植え機はマジにひっくり返ります。



そのまま下敷きになってしまえばアウトです。
実はこれ、決して大げさな話ではありません。
農林水産省の調査によれば、令和6年(2024年)の農作業死亡事故287人のうち、半数以上にあたる156人(54.4%)が農業機械による事故でした。
さらに機械事故の原因として最も多いのが「機械の転落・転倒」で、82人(機械事故全体の52.6%)を占めています。
田んぼへの出入りでひっくり返るというのは「あり得る話」どころか、農作業死亡事故の中でも典型的なパターンなのです。
出典:農林水産省「令和6年に発生した農作業死亡事故の概要」(2025年公表)
事故を防ぐ手立てとしては、毎年田んぼの入り口をチェックして、危険な箇所は整地するのがおすすめです。
田植え機もハマる「ぬかるみ」の恐怖


水はけが悪くぬかるみが深い田んぼでは、田植え機がハマって抜け出せなくなることがあります。その場合は、トラクターや重機などの手を借りるしかありません。
方法としては、トラクターで田んぼに入り、ワイヤーロープなどで田植え機を括って牽引します。



抜け出せずショベルカーに引き上げてもらったこともありました。
こういった田んぼは作業性も収益性も低下させるため、耕作放棄地になってしまうのが現場のリアルです。
急な雷雨への警戒
田植えのシーズンは季節の変わり目でもあり、天気が変わりやすく急な雷雨に見舞われることが多々あります。その場合は途中でも作業をヤメて、避難するのが鉄則です。



雷は田んぼにも落ちるため、油断禁物です。
夏の山場|田植え後の水管理と雑草との戦い
- 雑草は生育初期に「ナギナタ」などの除草剤で叩く
- 中干しは根を強くし、秋の収穫に向けて地面を固めるひと手間
- 草刈り・草取りは、猛暑からぬかるみ、虫との闘い
田植えが終わって一息……とはいきません。
収穫までの夏場は、雑草と猛暑に向き合う、米づくりで最もハードな「管理作業」の季節がやってきます。
水中の雑草は初期に叩く|除草剤散布のコツ


田んぼ内に生える雑草を抑えるために、除草剤を散布します。水中に潜む雑草を成長する前に叩くことで、稲の生育を阻害せずに済みます。
代表的なのが「ナギナタ豆つぶ」や「ジャンボ剤」と呼ばれるタイプ。
中でもナギナタ豆つぶは、ちょっとユニークな撒き方をします。
粒は大豆ほどの大きさ。これを手持ちのコンパクトなバケツに入れ、専用の散粒スティックを使って、畦から田んぼの中へ放り込むように撒いていきます。
「そんな大雑把でいいの?」と思うかもしれませんが、この豆つぶ剤は、水面にプカプカ浮いて勝手に広がるのが特長。畦から投げ込むだけで、有効成分が拡散していくんです。
ただしテキトーに撒けば当然ムラが出るので、歩数を数えつつ一定の間隔で投げ入れるのがコツ。自分の歩幅で散布の精度をコントロールします。
また、5反(50アール)以上の広い田んぼになると、畦からの投げ込みでは中心部まで届きません。



田んぼの中へ入り、足をとられながら撒くこともざらです。
こうした省力化のニーズを背景に、近年はドローンによる上空からの散布も普及しています。
稲を強くし、地面を固める「中干し」の科学


中干しは文字どおり、田んぼの中を干す工程であり、稲の生育を助長する大事なひと手間です。水の放流を一旦止めて排水口を開け、あえて一定期間田んぼの水を抜いて土を乾燥させます。
具体的な役割は以下のとおりです。
- 根を強くする
土中にヒビを入れて酸素を供給し、メタンなどの有害ガスを抜くことで根腐れを防ぐ。さらに深部まで空気が通ることで、稲の根は地中深くへとしっかり張り、丈夫な根張りに育つ。 - 無駄な成長を抑える
茎が増える(無効分げつ)のをストップさせ、栄養を「穂」に集中させる。 - 秋の収穫の準備
田面を固めることで、秋に重いコンバインが入ってもぬかるまない強固な地面を作る。



中干しのように、昔からの農法には理にかなった工夫が秘められています。
夏の最大の敵|畦と田んぼ内の草刈り・手取り除草


6月を迎える頃には、田んぼの畦は雑草祭りです。雑草を放置しようものなら、害虫のすみかになるだけでなく、近隣の農家からも白い目で見られるため、除草作業は必至です。
前に除草剤を撒いた田んぼの中にも、雑草は容赦なく生えてきます。



特に厄介なのが「クサネム」などの実をつける雑草たち。
雑草の種子は、収穫時にも混入しやすく、米の品質や評価に大きく関わってきます。したがって、見つけたら手作業でも引っこ抜くしかありません。
3つの区分に分けられる除草作業


田んぼの除草作業は、大きく分けて以下の3パターンです。
| 除草方法 | 雑草サイズ | 肉体的負担 | 特徴・コスト |
|---|---|---|---|
| 除草剤の散布 | 足元10cm程度まで | 少ない | 薬代がかかる。 初期対応向け。 |
| 草刈り機 | 15cm以上の背丈 | 中〜大 | 7月からのメイン作業。 田んぼの外側に倒す技術が必要。 |
| 田んぼ内での手取り | 種をつける厄介な草 | 大(過酷) | 猛暑とぬかるみの中での作業。 クサネム等の除去に必須。 |
なかでも「手取り除草」は、なかなかの重労働。
猛暑のなか田んぼに入り、ぬかるみを歩くだけでも足腰にずっしりと疲労が溜まる。
成長した稲の葉が肌にチクチク刺さる。



ふと顔を上げれば黒と黄色の縞模様のコガネグモと遭遇する──
現場はまさにデンジャラスです。
田植えや収穫は機械化でラクになってきてはいますが、夏の除草作業は、依然として大きな課題として残っています。


稲刈り|収穫前の準備とコンバイン作業の極意
- 収穫前には田んぼの排水と、乾燥機の清掃が欠かせない
- コンバインの積み下ろしや田んぼへの進入は、一歩間違えれば大惨事Part2
- キャタピラのコンバインでもハマって抜け出せないことがある
夏の管理作業を乗り越えると、いよいよ収入源となる「収穫」の時期。
作物は収穫まで出費ばかりなので、ここからの工程は1年の成果を確実に回収する大事な仕事になります。
収穫前の重要任務。乾燥機の清掃と田んぼの排水
収穫が始まる前に、大切な準備が2つあります。
1つ目:米を乾燥させる機械の掃除


収穫した米の籾は、一度乾燥機に入れる工程があります。そのためシーズン前後にメンテナンスを含む清掃が欠かせません。
フィルターやタンク内部をコンプレッサーで吹き飛ばし、地道な掃き掃除をして清潔な状態にしておきます。



ネズミの住処としても格好な場所になります。
一方で、乾燥機を持たない農家は、「ライスセンター」などと呼ばれるJAなどの共同施設へ、収穫した籾を持ち込んで、乾燥・籾すりを任せています。
2つ目:田んぼの排水と暗渠フタの回収
暗渠と明渠の両方から水を落として、完全に排水させることも必須の工程です。地面をカチカチに固めます。
田植えの準備編で閉めた暗渠のフタを、このタイミングで水路に入って回収します。
自分たちで紛失しないよう、圃場(ほじょう)ごとに管理するのも大切です。
こうして、コンバインが入って収穫できる状態になります。
一緒に作業していたおじさんから聞いた話で、面白かったものがあります。「米」という漢字は「八十八」に分解できますが、「これは稲穂に実っている粒の数が八十八なら、ちょうどよい収穫の目安なんだ」と教えてくれました。
ちなみに一般的には「お米ができるまでに八十八回の手間がかかるから」という説が有名ですが、現場で実際に稲穂を見ながら聞いたこの解釈は、収穫の現場感があってなのか今でも覚えています。
コンバイン運搬|稲刈りで意外と緊張する場面


いよいよコンバインの出番ですが、田植え機と同様、道路の自走はキャタピラに負担をかけるため、基本はトラックで移動します。
そしてこのトラックへの積み下ろしがまた緊張するポイント。
コンバインの運転席は視界が悪く、見えづらい状況下でトラックに載せなければなりません。荷台からキャタピラの片方が脱輪しようものなら、一発でアウトです。
また田んぼに到着する前には、コンバインをどこで降ろすかや、トラックの置き場所を探すなど、むしろこっちのほうが大変な面もあります。



「稲刈りの苦労は、稲刈り以外にある」と言っても過言ではないです。
コンバインの稲刈り手順|外周から渦巻き状に刈り進む4ステップ


田んぼへ到着し、コンバインを降ろせたら、いよいよ稲刈りスタートです。
田植えの時と同じく、田んぼの入り口の勾配に気をつけながらゆっくりと進入します。
そしてコンバインによる稲刈りは、以下のような流れで行われます。
- 対角の角めがけて、斜めに刈り進む
入り口から田んぼに入ったら、まず入り口の対角(一番遠い角)に向かって、稲の列を斜めに横切るように刈り進みます。
田んぼに、斜めの一本道ができるイメージです。 - 対角の角でターンスペースを作る
対角の角まで到着したら、すぐに刈り続けるのではなく、何度か前進とバックを繰り返して、ターンするためのスペースを確保します。
コンバインは車体が大きく、その場で90度旋回するには相応のスペースが必要なため、この準備がとても大切です。
手順1で斜めに刈ったのも、ここでターンスペースを作るための布石です。 - 外周を一周、稲の列に沿って刈る
ターンスペースができたら、ここから本格的な稲刈りスタートです。コンバインを稲の列に平行に向け、田んぼの外周をぐるりと一周します。
畦に沿って進むイメージで、4辺すべてを刈り終えると、田んぼの外側に1周分の刈り跡ができます。 - 一回り内側に入って、渦を巻くように中央へ
外周を一周したら、そのまま一回り内側に入って、また一周。これを繰り返すと、まるで渦を巻くように、徐々に内側へ向かって刈り進めていきます。
最後に田んぼの中央まで刈り取れば、稲刈りは完了です。
刈っている途中にコンバインのタンクが籾で満タンになれば刈り取りをストップし、畦道で待機しているトラックに排出します。


この時、排出用の煙突(オーガ)の先にカメラが付いている最新機種なら、窓を開ける手間なく狙ったところに排出できます。



米の収穫も2人体制で、「刈る人」と「乾燥機へ運ぶ人」の連携プレーで行われます。
ぬかるみの恐怖と農地集約化の課題
コンバインは馬力があり、走行部分がキャタピラなので多少の無理は効きます。しかし、水はけが悪くぬかるみが凄まじい田んぼでは、コンバインも抜け出せない時があります。



「車体の底」が地面と接地したらほぼ終了です。
自力では抜け出せなくなり、重機に助けを求めることになります。
このような条件の悪い田んぼでの作業は、手間や修理費のほうが高くつくため、誰も何も作らない現状を招いています。
近年は生産の効率性を上げるために「農地の集約化(小さな田んぼを1つの大きな田んぼにまとめること)」が進んでいます。一枚あたりの規模が大きければ、コンバインの移動や管理の手間を省けるため、さまざまな面においてもプラスになります。
しかし、これは条件のよい平野部での話です。中山間地域では地形的に集約化が難しく、さらに前述のような「すぐハマるぬかるんだ田んぼ」は、どの地域でも借りられることなく、耕作放棄地になるのが現場のリアルです。
稲わらの処理|昔の活用法と現代のやり方


稲刈りでは多くの稲わらがでてきます。
昔は、稲刈り後に出た稲わらは束ねて田んぼで保管し、その後、家畜のベッドや畑の敷きわらなどの場面で活用されていました。



稲わらは当時の暮らしと密接した資材でした。
一方で今は、稲わらの需要は減っています。そのことからも、稲刈り時にはコンバインの機能を使って稲わらを細かく裁断し、そのまま田んぼに撒いて土に還すやり方が一般化しています。
米になるまで|乾燥・籾すりから玄米へ
- 籾すりは機械任せで肉体疲労は少ないが、異音察知やパーツ交換など日々のメンテが肝
- 「もみ殻」は畜産農家へ渡り堆肥になるが、未熟な状態の強烈な悪臭は現場の隠れた苦労
コンバインで収穫したばかりの米は、硬い殻に覆われた「籾」の状態です。
ここから、乾燥と籾すりという2つの工程を経て、私たちが知る「玄米」の姿になっていきます。
乾燥と籾すり〜作業は機械任せだがメンテナンスが命〜


収穫した籾は、まず乾燥機に入れて適正な水分量(15パーセント前後)になるまで、じっくり水分を飛ばします。



カビの発生や傷むのを防ぎます。
乾燥を終えたら、次は「籾すり機」にかけて籾の殻を取り除きます。この籾すりを経て、見慣れた玄米が誕生します。
乾燥と籾すりの工程は、ほぼ機械に任せられるため、これまでの泥まみれの作業に比べると体はラクです。だからといって気は抜けません。
ここでは、機械の不調や異音をすばやく察知して、対処することが求められます。
特に籾すり機は、ゴムロールなどの消耗パーツが多く使われています。



定期的にパーツを交換するなど、細やかな配慮と気づきが大切。
大量のもみ殻と、未熟堆肥の匂い


籾すりすると、玄米と同じくらい、いや、それ以上に「大量のもみ殻」が発生します。その量は半端ではないため、多くの農家が処分に困るケースが多々あるのです。
もみ殻はそのまま撒いてもすぐには土に還らず、使い道も限られているため、処分に頭を悩ます要因となっています。しかし、このもみ殻を求める人たちもいます。
それが「畜産農家」です。
もみ殻は、牛などの家畜の敷材(ベッド)としてうってつけなのです。そして、家畜の床に敷かれたもみ殻は糞尿と混ざり合い、堆肥(たいひ)として再び農家へと配給されるという循環システムができています。……が、ここで現場ならではのリアルな話を一つお伝えします。
配給される堆肥が完全に発酵していればいいのですが、まだ発酵途中の「未熟な堆肥」は、とんでもなくクサい。
堆肥化は、農家自ら行わなければならないため、あの強烈な悪臭に耐えなければならないのも、米づくりにおける知られざる裏側です。



堆肥を切り替えした日はもう、、、
歩くウンコと化します。
玄米の梱包と荷積み|米作りで最も力を使う作業
- 力求む。玄米を袋に詰めてパレットに積む作業
- 30キロの米袋は農家の体力を激しく消耗させる
- 積み上げる際は背中と腰の使い方が命運を分ける
草取りや草刈りなど持久力が求められる作業は多々ありましたが、純粋なパワーを使う仕事は意外と少ない米づくり。それが、籾すりが終わった瞬間、最後にやってくるのが30キロ米袋との格闘です。
フレコンバッグと30キロ袋|2つの梱包方法の違い


玄米の梱包方法には、大きく分けて2つのパターンがあります。
一つは「フレコンバッグ」と呼ばれる1トン用の巨大な袋に入れる方法です。
これはフォークリフトを使って機械的に運ぶことができるため、体にはやさしい作業です。
問題はもう一つ、昔ながらの「30キロの米袋」ケースです。
これがかなりの重労働。
30キロ米袋の梱包からパレット積みまでの流れ
具体的な作業の流れは以下のようになります。
- 袋の設置と計量
玄米タンクの排出口に「リフター」をセットし、その上に空の米袋を設置します。
機械で設定した量(30キロ)が自動で投入されるため、ここは待つだけでOK。 - 袋の口を縛る
袋が満たされたら口を結んで閉じます。
硬い紙袋とヒモで指が何度も擦れるため、痛い思いをします。
農家の手の皮が分厚くたくましいのは、日々のこうした作業のたまもの。 - パレットへ積む
リフターのボタンを押し、袋を持ち上げやすい高さまで上げます。
そこから30キロの袋を抱え上げ、パレットに積みます。



一日やった日は体バキバキです。
一発KOの危険。パレット積みによる腰へのダメージ
そしてパレットへの積み方にも、決まりがあります。
同じ向きで上に積んでいく「棒積み」は、少しの揺れで倒れてしまうためNG。
揺れの耐久性を高めるために、袋の向きを変えながら互い違いに積む手法を取ります。
具体的なイメージは以下のイラストです。





パレット積みの恐ろしさは6段目あたりから……
米袋をパレットに積んでいく作業ですが、6段目ともなると、30キロの米袋を自分の胸より上の高さまで持ち上げて積み上げなければなりません。
少しでも腰の使い方を誤れば、一発KO(ギックリ腰など)。危険と常に隣り合わせの、まさに米づくりにおける最後の難所なんです。
出荷と次シーズンへの備え
- 収穫した米は等級検査を受け、品質に応じたランクで出荷される
- 冬の間も田んぼを耕起し、来年に向けた土づくりが始まる
荷積み作業を終えたら、いよいよ1年の集大成「出荷」を迎えます。そして米農家の仕事は出荷で終わらず、すぐに来年に向けた土づくりが始まっていきます。
等級検査と出荷|1年間の評価が決まる瞬間


袋詰めされた玄米は、そのままお店に並ぶわけではありません。
農産物検査員による等級検査があります。
ここで米の粒の揃い具合や、クサネムなどの雑草の種の混入がないか、水分量は適正かなどが厳しくチェックされます。
この検査によって1等、2等、3等、あるいは規格外といったランクが決定し、それに応じた価格で引き渡されることになります。



1年間の苦労が結果として評価される、農家にとって緊張する瞬間です。
休む間もなく次シーズンへの備え
そして出荷を終えても、米農家の仕事は続きます。
翌シーズンの準備に向けて動きます。
稲を刈り終えた後の冬の時期に、トラクターで田んぼを耕します。刈り取った後に残った稲の切り株やワラを土の中にすき込み、時間をかけて分解させるなど、下地づくりが欠かせません。
米づくりは収穫して終わりではなく、常に次の食を育むためのサイクルとして1年中つながっています。
まとめ|米作り1年間のサイクルを振り返って


米づくりの1年間を「育苗→田んぼの準備→田植え→夏の管理→稲刈り→籾すり→出荷」という流れで見てきました。
機械化が進んだ現代でも、米づくりには自然と体を張って向き合う泥臭い現場があります。
田植え機で田んぼに入る際の転覆の恐怖、夏の猛暑とぬかるみの中での草取り、そして腰を砕くような30キロ米袋の荷積み作業——そのどれもが、毎日の食卓に並ぶ一杯のお米の裏側で、確かに行われていることです。
さらに暗渠のフタが消える事件、未熟堆肥の強烈な匂い、ハマったコンバインを救出する重機作業など、現場でしか分からない苦労や工夫もたくさんあります。



この記事を通して、「米はこうして作られているのか」と、農業への見方が少しでも変わればうれしいです。
もしこの記事を読んで、「自分にも何かできることはないか」と感じた方がいれば、地域の農産物を選ぶ、農業体験に参加する、後継者問題に関心を持つなど、自分なりの関わり方を考えてみるのもひとつのアクションです。
米づくりの現場は、これからも続いていきます。
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