2025年・春夏に作ったジャガイモやコマツナ、キャベツ、ブロッコリー、キュウリ、ミニトマトたち。総じて収穫できた一方、病害虫からの被害は避けられませんでした。
アブラムシやニジュウヤホシテントウ、ネコブセンチュウ、うどん粉病など、前作なにもやってなかった土でこれだけの被害がでるとは、正直思ってなかったんです。
そこで冬作に向けて栽培の根幹となる土壌改良をすべく、石灰窒素を投入することにしました。この石灰窒素は、肥料・農薬・土壌改良材の側面をもつ資材であることをご存知でしょうか。
今回は知っておくと役立つ石灰窒素の基礎知識から効果、注意点を紹介します。
肥料と農薬と土壌改良の三刀流【石灰窒素】

石灰窒素は、肥料・農薬・土壌改良の役割をもつ農業資材。
石灰窒素という名のとおり、窒素の肥効があります。石灰であることから、土壌の酸度調整にも適材。
そして石灰窒素の目玉となるのが、「カルシウムシアナミド」という成分です。カルシウムシアナミドは、土の水分と混ざり合うことで「シアナミド」に変化。そしてこのシアナミドが、土のなかにいる病原菌や害虫、雑草の種に効果を発揮するのです。
例えば石灰窒素は、次のような病害虫や雑草に効果が期待できます。
- 根こぶ病、萎凋病、萎黄病
- ネコブセンチュウを含む線虫類
- コナギやイヌビエなどの一年生雑草
連作していないのに上記の病害虫や雑草に悩まされている人にも、石灰窒素は味方となる資材です。
石灰窒素のすごいところ
適用範囲が広い

石灰窒素は“農薬”の側面があることから、当然、農薬に登録を持つ品目(野菜・穀物)にしか使えません。ですが、石灰窒素は農薬登録の適用範囲が広く、汎用性に富む資材になっています。
石灰窒素に適用を持つ品目は、以下のとおりです。
品目 | 病害虫 |
---|---|
はくさい | 根こぶ病 |
キャベツ | |
野菜類 | センチュウ類 |
“野菜類”と記されているように、石灰窒素はほぼすべての野菜に適応を持つ資材です。
肥料の効果が長い

石灰窒素は、緩効性(かんこうせい)肥料という、肥効が長くゆっくり働く肥料です。そのワケは、石灰窒素が分解される過程にあります。
石灰窒素は畑にまかれると、土壌消毒の効果を持つ「シアナミド」に変わります。そしてシアナミドは5〜10日かけて「尿素」になります。それから尿素が「アンモニア態窒素」になることで、ようやく作物に窒素を供給できるようになるのです。
一般的な8-8-8の化成肥料は撒いたらすぐに栄養を提供するスプリンターであるのに対し、石灰窒素はマラソンランナーのように、ゆっくりとですが長く肥料を効かせることができるのです。(2〜3カ月持つ)
補足として、石灰窒素が変化を遂げるには、土の中の水分や微生物の働きが欠かせません。
メタンガスの発生を抑える

石灰窒素には、温暖化の原因の一つとされるメタンガスの発生を抑制する働きもあります。
メタンガスの発生要因
メタンガスは「メタン生成菌」という微生物が、酸素のない状態で有機物を分解する際に発生します。
特に水を張った田んぼの土中は、まさにメタン生成菌にとって生息しやすい環境です。ここに稲刈り後にすき込まれた稲わらが分解されずに残っていると、翌年の田植え時期にはメタン生成菌のエサとなり、メタンガスが発生してしまうのです。
そこで登場するのが石灰窒素。
石灰窒素には、稲わらなどの有機物の分解を促進する(腐熟させる)効果があります。これにより、刈り取り後の稲わらを翌年の作付けまでに土に還すことができ、メタン生成菌にエサを与えずにすむのです。
そのため、米を作るプロ農家にとって石灰窒素は、欠かせない資材の一つでもあります。
コストパフォーマンスに優れている

石灰窒素は用途が幅広いだけでなく、安価で手に入る資材です。
殺菌剤や殺虫剤、除草剤などの資材は別に購入することが多く、費用から置き場所などいろいろかさばります。
一方で石灰窒素なら、根こぶ病やフザリウム菌、センチュウ、雑草の抑制に働きかけながら、窒素肥料や土壌の酸度と調整までできるという、万能選手です。
ただし、汎用性に優れている石灰窒素にも、使う前に必ず押さえておくべき注意点があります。次では石灰窒素を安全に使用・管理するための手引きをお伝えします。
石灰窒素を使うときの注意点
散布後の飲酒は避ける

石灰窒素を散布した当日は、お酒を控えることが推奨されています。石灰窒素の主成分であるシアナミドは、お酒の酔いを早め、二日酔い・悪酔いの原因になるからです。
普段からお酒を飲む人は、気をつけるべきポイント。
お酒は石灰窒素をまいてから24時間経過してから、飲むことが鉄則です。
吸わない・付かないように対策する

石灰窒素をまくときは、吸ったり体に付いたりしないよう対策をしましょう。これは石灰窒素を扱う際の注意事項にも明記されています。
吸った場合にはノドや気管に炎症を起こす可能性があります。皮膚に付いた場合にも、かぶれるなどの症状が起こります。
そのため石灰窒素を扱う際には、以下のアイテムを身につけることが必須です。
- 帽子
- マスク
- メガネ
- 手袋
- 長袖
- 長ズボン
石灰窒素は、上記のアイテムを用意してから散布しましょう。
散布後は5〜10日間待ってから種まきする

石灰窒素を散布した直後に、種まきや苗を植えるのはおすすめできません。
土の病害虫や菌をやっつけてくれるシアナミドですが、これから育てたい作物には悪影響になるからです。発芽しなかったり枯れてしまったりなどの原因になります。
シアナミドの分解は温度によっても異なり、夏場は5日〜10日、冬場は7日〜12日間は空けるのが理想です。
家庭菜園にもおすすめの石灰窒素

石灰窒素はプロ農家が使うほど頼もしい資材である反面、ホームセンターには割と置いていない資材。店員さんに聞いても「?」となることもあるでしょう。
石灰窒素が置いてない理由としては、庭先やプランターほどの規模では、必要になるケースが少ないからだと思われます。
また置いてあった場合でも一袋20kgと、個人ですべて使い切るのは難しい状態で売られています。場所を取ることに加え、湿気や水気に弱いので、管理する手間もかかります。

そんな小規模で野菜作りを楽しむ人におすすめなのが、サンアンドホープの石灰窒素。500g入りで使い切りタイプでありながらも、300円前後で買えるのでとてもお得。一坪で使い切れる量です。
石灰窒素そのものは店頭に置いてあることが少ないので、ネット通販で買うのが賢いです。石灰窒素を活用して、作物たちがスクスク育つ畑を目指しましょう。
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